章・語らぬは己がの強さか弱さか

04.それでも護りたいそれでも


 

 治療を終えた女生徒、佐竹桐子は最後の一体の打破に突入した悠に声を掛けた。
「悠、だいたいのガルム達は破壊されたみたい!」
 ここ以外にもあふれ出たガルム達は悠達がここに来るまでに倒した分、そして寮に向かったモノは教員達に苦心の末、破壊されている。
 リサーチャーの報告によると今ここにあるガルムで最後だという。
「あと、ここに人が入れないように結界をはっときました!!」
「分かった」
「キリコ!俺には報告なしか!」
「あんたに報告しても聞かないし、意味無いわ!」
 こんのクソアマ!
 黙りなさい筋肉馬鹿!

 全くもってさっきまでの壮絶な雰囲気が無くなっていた。
 温和しそうに見えたのに意外に桐子が口が悪く、燐は驚いていた。
 そう、もう戦いは終わりだと
 そう、思っていた。
 だが、あまりの圧倒的な強さ故
 目の前に、立ちふさがる敵故に
 気づかなかった。

 燐は、破壊ではなく、倒すことをしていたことを。
 決して破壊ではなく、一時停止だと。

 気づかなかった。
 己を狙う眼光が
 己を貫く砲口が

 密かに着実に
 狙いを定めていた。

 気が付いたのは、燐だった。
 光の反射で視界を取られたその瞬間、その先に
 奥に光る凶荒の光。

「      」

 何を叫んだか分からない。
 傷が治ってしまったから、
 走れるようになったから、
 戦うことができるから、

『自分のやれること』
 
 守る。

 燐は神速で駆け上がり、
 悠を突き飛ばした。

 己が楯に
 己が壁に
 己が無に

 変わる。






 どこかで、誰かが咆吼した。