章・語らぬは己がの強さか弱さか

05.終末の月夜


 



血と混ざりあい、

ヘドロ流れる

誰か

誰か

声にだす

返ってくるのは

自分の声だけ

誰か

誰か

求めている人は

腕の中

誰か

誰か

握った拳銃

すでに

ない

誰か

誰か

この人を、助けて


















握った拳銃

煙吐き…


オマエガ

違う

コワシタ

違う?

雨、血川を描き

雨、肉泥に溺れる

むせかえって

吐く吐く吐き吐く

なにもかも吐いてしまえば

皮になる?

吐く吐き吐き吐く

異臭立ち込めただけ。





 気が付いたら、保健室にいた。
 燐は白い天井をぼんやりと見上げた。
 心が麻痺している。
 ……隣のベットに、ぴんぴんの髪が流れている。
 魁。
 ばさっと布団を払い除けて隣のベットにすがりついた。

「…魁?」
 問掛けても、返事はない。

 魁は眉を潜め、苦しんでいるようだった。
「……魁?」
 そっと、魁の頬に触れた。
 あたたかい。
 っ途端に目から雫が流れ落ちた。止まらない。
「ふっ、くぅ…ぁあぅ」
 声を押さえきれない。
 燐は、泣いた。
 魁が生きていることに感謝した涙が魁の顔に降りかかった。
 ……魁の顔が大きく歪んだ。
「ぅぁ」
 短い、痛恨の思い。
「魁?」
 傷が痛むのだろうか?
 まだ、涙な止まないまま燐は魁の手を強く握った。
「ぅぅああ゛あ゛!!」
 絶叫が燐の耳を震えあがらせた。
 握った手が逆に強く握りかえされ、軋む。
 必死に魁を呼び、起こそうとするが、起きない。
「魁!?起きて!」
「あ゛あ゛ぁぐぅあ!」
 体が跳ねるのを必死に押さえ込む。
 あまりにも悲しくて、つらい、この声は。
 誰かを求めているこの強い手は。
「魁。ここにいるよ。」
 叫び続ける魁の耳元で囁いた。
 貴方の苦しみが分からないけれど、側にいることしかできないけれど。
「一緒だよ。」
 爪が食い込み、皮膚を破る。
 その手をぐっと両手で握り締め、祈るように額を寄せた。