章・問いかけの先は全て無の空に

01.いきなりピンチです。みなさん。




ある日、兄が笑って言った。

手は謝るように挙げられていた。

「ゴメン」

いつものように筋トレをさせられていた俺はもくもくと頑張っていた。

ここで止めて頭が割れそうなデコピンをされたことがあるからだ。

「なにが?」

兄はそれはそれは笑顔で。
いや、そもそも笑顔以外の時の方が少ないんだが。

「いやさ、」


小さいときから筋トレとかしてたら身長かえって伸びないんだってさ。

でも、幼いときってことなのか背が低いってことなのか分かんないんだ。


俺は久々にいい笑顔になった。


「くたばれ、く・そ・あ・に・き!」

乱闘が始まって。

すぐにぶっ倒れた俺と傷一つ無い兄が笑う。



いつもの光景。ありふれた光景。


でも


あのころに戻りたいと魂が啼いた。