章・過去が眠る楽都市で踊り狂え

08.恋は下心、愛は真心と言いまして


「君は、変なところで悩むのだな」
「変じゃないって、俺にとって超現実的な問題だ
 心おきなく学園に通えるためには解決したかったことだ。根本的な解決にはなっていない。魁には、兄から遺された遺産だけでなく、家族の保険金が遺されていたが、いまやその貯蓄は現在進行形でガリガリと音を立てて削られていっている。
 ……学園で内職できないかな……
 残念ながら、学園では電話も手紙も配達も原則禁止だ。認められたとしても検閲がかかる。学園都市でのバイトでもしてみたいな。
「辞めるとか言ったら、学園の友達が怒るんじゃないか?」
 一瞬、フェンリルを振り回す燐とか、腹黒い笑顔になっている静流とか、負け犬と鼻を鳴らす剣崎とかが目の前に浮かんだ。何故か食堂のおばちゃん達がすりこぎを振り回している。
「・・・最初と最後のが怖いなー・・・・」
 力ずくでも技都に引っ張っていかれそうだ・・・・
 魁の妄想が見えるわけではないのだが、里佳は笑いながら水の追加を頼んだ。魁のころころ変わる表情だけでもごはん三杯はいける。
「ようはお金の問題だろう?なんとかなるんじゃないか?」
 妙に楽観的な里佳に、魁は内心呻いた。
 くそう、これだから金持ちってやつぁ。
「できるだけ負の遺産は残したくないんだ」
「君、その年でそんなことを言っていたら、禿げるぞ」
「・・・・・・俺の家系って、どうなんだろう・・・・・」
 慌てて頭を押さえる。今はふさふさしているが――確かにこんなにキリキリしていたら、あっという間に禿げそうだ。残念ながら魁は自分の実の父親も、祖父達も会ったことも写真で見たこともない。その頭が薄れゆく運命にあるのか予測できるものがない。しかも側にいた血縁、兄の場合、髪はちゃんとあったが、若くして亡くなっている。
「開けてびっくり玉手箱だな」
「キューピッチ老化かよ!レッツ脱毛ガスとか勘弁してくれ!」
「乙姫はなんでそんなものをあげたのだろうな」
「口封じじゃねぇの?言いつけ守れない人間は竜宮城のことを喋りそうだし、噂を聞きつけた他の奴らがわんさかくるのは困るだろ」
 なるほど。
 納得するんだ。
 かなり適当に言ったのにさらりと流されて肩すかしだ。魁はツッコミだが、たまに言ったボケにツッコミがないと妙に悲しい。ボケるつもりが逆にツッコミをしないといけないなんて……ボケがいがないじゃないか。
 魁はなんだかんだいって、関西人だった。
「まー、俺のことはもういいや。里佳は最近どうなんだ?」
「うむ。実は・・・・好きな人ができたんだ」
 問答無用で吹いた。衝撃的事実に魁は鳥肌を立てて抗議した。
「ちょっ!? いきなり恋バナ突入かよ! 無理! 俺には無理! 和泉さんかイソラに言えばいいと思う!」
 つーか、男友達に恋愛話ののろけなんざすんじゃねーー!!
 目の前の年上のお姉さんは口を尖らせた。その端は器用に上を向いていた。
「和泉もイソラもいないではないか。つまらん」
「つまらなくて結構!じゃぁ、俺的ジンクスがあるんだが、いいか」
 里佳が首を傾げる。やけくそぎみに魁は胸を張って、言った。
「俺の周りに、恋愛を成就しているヤツなんていない!」
 養父と母を除けば事実である。だが、実父と母は別れている。
 そんな寂しいことを堂々と言い放つ魁がばい菌かなにかのように里佳は眉を顰めた。
「・・・魁、"類"か?」
 類は友を呼ぶ、の類だ。内心恐れていたことをずばりと言われた動揺を隠すように叫んだ。
「なんで俺が核なんだよ!?それって最悪じゃねぇか!」
 ていうかトラウマ直撃で勘弁して欲しい。
「いや、まだ罠をはる準備中でな……君とは縁を切らせていただく」
「前半も後半も最悪だな、お前!」
「恋する乙女に、そんな口汚い言葉を吐きかけてはいけない。恋をし、輝く乙女の瞳を潤ませるようなことは、愛する人と手を取り合えた幸せ以外であってはいけないのだ。綿菓子のように甘く繊細な心を内に秘めた……」
 天使降臨の光を何本か背後に振らせ意味不明な熱弁をはき続ける里佳に魁は受け売りを棒読みした。
「精神は男の方が弱いってエンが言ってた」
「それは単に男という種が根源的にへたれなだけだ」
「おねーさんが本性だしたー!」
 ファンの連中に聞かせてやりたいね!
「都合の良いときだけ年下を主張するのは、良くないとお姉さんは思うぞ」
「都合の良いときだけ年上を主張するのも、良くないと年下の俺は思うぞ」
 二人は、同時にメニューを掴み、振り上げようとする互いを牽制した。



「仲がよろしそうですわね」
 静流の少し弾んだ声とは逆に燐の機嫌は最悪だった。
 確かに、おっしゃるとおり、視線の先にいる二人はとても楽しそうだ。
 急いで出て行った魁の後をつけてきた燐達は今別の店の中から彼らを見ていた。
 一度はまかれたかと思ったが、彼らが目立つところにいてくれたことと、途中から一緒になった先輩達のおかげだ。しかも先輩達の奢りだ。燐は炭酸飲料水に突き刺さったストローを軽く噛んだ。
「やるな、魁君。すごい美人じゃないか」
「チビガキのくせに生意気だ」
 口笛と歯ぎしりの不協和音で耳障りだ。
 そう、魁のお相手はとても美人なのだ。どうにもこうにも魁の周りには美人が多いと思う。最たる相手はリリィだ。正直へこむ。
 静流はいつからともなく――どこからともなくではなく――持っていたビデオカメラをまわしていた。
 一体、何故。
 燐の視線に気がつき、静流はにっこりと微笑んだ。
「淳子さんに撮ってきて欲しいと頼まれたのです」
 なんでも魁君のお兄様の墓前に飾るそうですわ。
 はじめてのおつかいじゃあるまいに。……は。初めてので、デートとかだったらどうしよういやでもまてしごととかいってたけどでもアレってどうみてもしりあいどうしにしかみえないってってことはやっぱりぃいやー。
 漢字変換も間に合わないほど混乱する。そもそもうじうじと悩むなんてことをほとんどしたことがないのだ。
 静流の隣でぼそりと悠が呟いた。
「……それってテレビごとじゃないとお兄さん、見えないよね」
「悠、細かいこと気にしてたら、禿げるぞ!」
「お前こそ、若いころに染色なんかしてるんだぞ」
 若禿げでヤクザと間違われてしまえ。
 俺は禿げたりしないー!と叫ぼうとする雅人に極寒の視線がきた。
「静かにしてくれませんか?集中したいのですけれど?」
 静流はことごとく雅人を邪険に扱っていた。苦手意識が転じて、敵視――攻撃へと変わっていた。雅人が隣に座ろうとしたらきっぱりと拒否した。顔を見て泣き出されたときよりはましとはいえ、被害にあっている雅人といえばやりにくそうだった。
「俺たちがうるさくしてても構わねぇだろ。くだらねぇ」
「ビデオはいつまで撮るんだい?まぁ、別に格段可笑しい光景でもないわけだし」
 悠の言葉に静流は無言で鞄をあけた。そこには一目では数えることができないほど、テープが入っていた。
「・・・・監視カメラ並?」
「つーかこっからじゃ、音声入るわけねぇだろ」
 残念ながら遠くの声を聞こえるようにするマギナはあることにはあるが、発信者にも受け手にも媒体が必要だった。そうなると携帯の方が便利だ。


 そんな学園関係者達が喋っている間、魁達も話を進めていた。
「で、どんなやつなんだ、里佳の思い人は」
「思い人……、君は時々もの凄く古風な言い回しをするな。直に好きな人、と言われるよりも恥ずかしいな」
「俺は直で言う方が恥ずかしいわ!」
 恋愛と対極のところにいる魁にとって、木っ端恥ずかしいことこのうえない。
 本当に嫌そうにしている魁を見て、里佳は不思議そうに小さな生物を見た。
「君は、人を好きになったことがないのか?」
 魁は一瞬黙り、首を横に振った。
「好きになったことくらい、あるさ」
 右手を、見る。握っていても、救えなかった大切な存在。
 里佳は、初めてジンと会ったときを思い出した。
「真柚ちゃんだったな」
「………………そうだよ」
 悲しい思い出に囚われそうになったが、今日は幸せな気持ちが勝った。
「今日、真柚の夢を見た」
 いつも見るような痛い夢じゃなくて、大きくなった真柚が、花畑で、白いドレスを翻して、笑っていた。とても消えそうな微笑みで、それこそ白く儚い綿菓子のようだった。自分の名を呼び、手を取り、とびっきりの笑顔。あれからもう、五年経っている。決して、もう、見られない。だが、夢の中なら会える。
「すっごく、幸せだ」
 噛み締めた言葉に、里佳は目を細めた。魁が幸せなことはなによりだけれど。
「……魁、今まで好きになった女性、その一は?」
「真柚」
 即答。真顔で。
「その二は?」
「母さん」
 即答。超真顔で。
「・・・・・・その三は?」
「九鬼マドカ」
 即答。超々真顔で。
 里佳も真顔で、拳で机を叩いた。
「シスコンマザコン面食いだなんて、救いようがないな、魁!」
「よ・け・い・な・お世話だーーー!!!!」
 ちゃぶ台ひっくり返すぞ!
「やれるものなら、やってみるがいい。まったく、君は本当に困った子だな。そんなことで子々孫々を残せると思っているのか」
「里佳の言っていることが大げさだよ!?なんで恋人飛ばして子々孫々!?」
 孫まで面倒みれねぇよ!
 里佳は無視した。しかめっ面で氷をガリガリと噛み砕いた。別に真柚が好きだということは悪いことではないが、魁は囚われすぎだ。今は外見が幼すぎるが、あと五年――いや、もう二、三年もすれば、なかなかいい男になるはず、だ。
「まったく。技都には可愛い女の子がいないのか?好きな人の一人や二人作ってこい」
「なんで浮気めいたことをわざわざ技都までいってしなきゃいけないんだ!」
 ていうか、似たようなことを聞かれたぞ、俺!
「椿を少しは見習え」
「あんな節操なしになってほしいのか?」
「…………」
 里佳は上を向き、下を向き、手をあごに当てて唸った。
「…………君は、純粋でいてくれ。だが、見習え」
「どっちだ。全く」
「で、技都に君好みの可愛い子がいないのか?それとも好みは美人系か?それとも同い年は眼中にないか?わたしのような年上の綺麗美人なお姉さんは好きですか?それとも年下の方がいいか?ロリが好きか?ツンデレか?眼鏡ッ子?思いあまって人妻・未亡人?そう言えばヒーラーってナース属性だな。ん、あぁ、そうか。君が特殊嗜好でも、わたしは君の味方だ」
「俺の歴代の好きな人を聞いてもなお最後を付け加えるか」
「心の傷が極端に嗜好を変えることもありえるのだよ。この私の心の広さを称えてみてもよいのでは」
「・・・・・じゃぁ、里佳の思い人でも?」
 ガン
 魁の指の間にフォークが突き刺さった。
 びょんびょんびょん。
「・・・・・・、心が広いって言ってなかったか、自分」
 フォークの柄がビンビンと揺れているんですが。
 魁は渾身の力でフォークを引き抜き、里佳に返した。
「・・・・・・、で、好みはなんだ。合コンでも組んでやろう。ルトベキアの学生なら、ハーレム作るのも夢じゃない」
「夢で終わらせろ。いや、そんなん組まれても、俺に時間と金がない」
 貧乏暇なしって言葉を知ってるか。
 里佳は遠慮なく舌打ちをした。ルトベキア学園都市の住人には外界との接触が限られている。魁はやれやれと肩を落とした。遊都繁栄応援団の彼女たちがお節介なのは今に始まったことではない。
「それにな、今抱えている問題を解決するまで色恋沙汰にはまる気はない」
 里佳は鼻を鳴らした。そしてとても人の悪い笑みを浮かべた。
「ふん、そういっていればいい。だが、駄目だ駄目だと思っている方がはまりやすいということを年長者から忠告させていただこう。実際私がそうだ。駄目だと自ら作った分厚いはずの壁をぶち破って自覚するのだ。その勢いも威力も桁違いだ。気がついたときにはもう遅い。自ら嵌ったピンクの罠に悶え苦しむがいい、若造が」
 なんで、女の人って他人の色恋が好きなんだろうね。
 人の不幸は蜜の味というのと同じ原理だよ。
「とにかく、そういうのは和泉さんにでもすれば?・・・・・・そういえば、俺、和泉さんの色恋沙汰聞いたこと無いな」
「私もないな。君が知らないとなると、あの人は実はそういうのに疎いのか?」
 さぁ?よく首をつっこんでるけど。
「和泉さんの恋愛・・・・なんか、想像できないなー」
 幼なじみのお姉さんの恋愛って結構複雑かも・・・・・。
「・・・・変なヤツじゃないと良いけど」
 そう、昔からずっと知っている。
 御菓子を奪い合ったり、いたずら仕掛けて、俺だけ生け贄にされたり、巫女さんとか無理矢理女装させられたり・・・・数々の思い出=被害者体験が脳裏に・・・・あれー、全然心配じゃ無くなってきた。
「安心しろ。確実に変な男だ。こう、何か、根源的なところで。ま、実際におかしな者であれば天照に社会的抹殺の刑に処せられるはずだ。和泉はアレでいて人を見る目がある。そうそう困ったことにはならないだろう。・・・・・・押して駄目なら押し倒す人だが」
 ですよね。
 天照も使って罠にはめるだろう。未来の和泉の恋人に手を合わせた。ごめんなさい。多分俺も巻き込まれる。でも、俺は和泉さんの味方です。
「もちろん、里佳の味方だからな」
「うむ。駆け落ちする際はよろしく頼む」
 うわー、予約二件目ですよ。
「安心してくれていい。実際に駆け落ちすることはないだろう。ふふ。政略結婚か、楽しみだな」
 魁は賢明にも聞かなかったことにした。里佳は歌手として活躍しているが、それは期限付きだった。期限が尽きれば、家の為に働かなくてはならない。自由の時間もあと残り少ないようだった。
「・・・・安心してくれたまえ。たとえ政略で相手に気持ちが無くとも、振り向かせる自信はあるのでな」
「心配しないよ。里佳は自力で幸せをつかみ取れる人だよ」
 そうか?
 里佳は苦笑した。
「里佳は美人だし、性格も良いし、頭も良い。自分の意見をちゃんとだせるから会話も弾むし。料理の腕はしらないけど、どうせするのはお手伝いさんだろ?同じ理屈で掃除も関係ない。まぁそこそこいいお嫁さんにはなれるさ」
「・・・・ふふ。わたしは脱いでもすごいぞ」
「訂正。セクハラ親父っぽくて気の弱い旦那さんを襲いそう」
 冗談だ。
「美人か・・・面食いな君史上、私は何番目だ」
「可愛い系じゃなくて美人系でってこと?それなら、えーーーーーー・・・・・」
 まず九鬼マドカだろーエンだろーって男だけど。リリィだろー和泉さんは綺麗だけど美人って感じじゃないなーあー生徒会のヒーラーも美人だったなー保健室の先生の人も結構・・・・・

"魁が泣かないから"

 ふと、思い出す。
 風が優しい初夏の夜。
 満月の光が差し込んだ保健室。
 キラキラとこぼれ落ちる涙。
 月の光を溜めた雫を、惜しげもなく。

"魁が泣かない分、私に涙がまわってくるの"

 夜と同じ優しい、飲み込まれそうな闇色の瞳。
 柔らかな頬は鮮やかに紅葉して。
 その健康的な肌を漆黒の緩やかな髪が包んでいた。

 燐。

「・・・・・・っ」
「どうした?」
 いきなりつまった魁を見て里佳が首を傾げた。こころなしか、魁の顔が赤いような。次の瞬間、里佳の顔がこれ以上ないほどにったぁと歪んだ。
「ど・う・し・たぁ?ん?顔が赤いぞ?」
「ばっ。ちょっと・・・日に当たりすぎただけだ」
 そっぽを向いた魁に里佳は身を乗り出した。
「ほぅほぅほぅ。そうかね?急激に温度上昇かね。きみは恒温動物だと思っていたがね。はっ。すでに更年期障害かい?若いのに大変だな」
「むしろ里佳が落ち着け」
「技都にとても素敵に美人な子がいるのかい?」
 ずばり切り込んできた。魁は一瞬呻いたが、体勢を立て直そうと耳を塞いだ。
「しーるーかー。美人さんなら俺の目の前にいるよ」
「んふふ。そんなことは知っている」
「・・・・・・・・・・・・うわぁ・・・・嫌な女の人もいる」
「それはあさっての方向にな」
「・・・・・・」
 魁は黙り、小さく深呼吸をした。そして0円営業スマイル。
「里佳は俺の中で・・・・四番目だな」
「関東人が好きなスルーだ。それでも関西の人間か」
 しかも表彰台に立てなかった。
「俺の人生の半分以上は関東なんだがな」
「細かいことをいうのは反則だ。……魁、人生経験として恋の一つや二つしておいた方が面白い、とだけ忠告させていただこう」
「誰も一生しないなんて言ってない。ただ、今は無理だっていっているんだ」
「青春時代にしないで、いつするっていうんだ。甘酸っぱい青臭い食えたモノじゃない恋が出来るのは今だけだぞ」
「最後の台詞に問題ありだ!だいたい、里佳の話だろ?なんで俺の恋愛相談になっているんだ」
「魁をからかうのが楽しいからだ!!」
 ぶっちゃけんなーーー!!
「ならば君は、わたしのトキメキメモリアルが一から聞きたいのかね」
「結果報告だけしてくれ」
「結果報告なんて二択じゃないか」
「困ったことがあったら言いに来てくれ」
「ルトベキア学園では連絡とれないではないか」
「・・・・和泉さん経由で多分いけるから」
 正確に言えば和泉→エン→ジョーカー→自分だが。
「やれやれ。わかったよ。ではそろそろ、魁が聞いてくれない愛の構築過程報告を和泉にしにいこうか」
「和久さんの見舞いもな」
 伝票を魁に渡した里佳は視線をまったく動かさずに、微かに口を尖らせた。
「それにしても、向こうの店で見ている人たちは君の知り合いかい?」
 視線が私に来ていないなんて、芸能人として嘆いていいかね。
 ギクリと、魁は視線を泳がしたが、憮然とした里佳に手を合わせた。
「ごめん。俺の学園知り合い。気がついていたんだな」
「彼らの尾行が下手だ。視線が痛い。・・・・・・っと。知り合い?」
 そうして、いきなり立ち上がった。
「どっちの女の子が本命だ!」
「だからちがうっつってんだろ!!!」
 どいつもこいつも!!
 魁は机に拳を叩き込んだ。