章・語らぬは己がの強さか弱さか

06.その名の波紋


 

深い深い森の中…否、森を摸したフィールド。
一人の男が寝そべっていた。
ジョーカーだ。
フロンティアの廃人と魁に揶揄されている彼は独自にサーバーを持っており、個人的な空間を作り出していた。
その精密さ、現実感は類を見ないほどのものである。
ジョーカーは、世界中から集めたデーターを目まぐるしい速さで処理していった。
鼻歌交じりで。
調べているのは今回の事件。
いささか不審な点が多かった。
学園側の調査をのぞき見したところ、
学園のスポンサーの一つの会社の戦闘兵器が原因不明のバグを起こし、トチ狂った…ということになっているのだが。
バグは、どうも誰かがコンピュータウイルスを入れたのではないかとジョーカーは睨んでいた。
明らかに単に壊れたのではなく、強敵に向かうように設定されていた。

魁が一台のガルムを倒した後、そのガルムから緊急指令が他のガルムを呼び寄せた。
ガルム達は他の場所からわざわざ引き返してきたのだ。
ガルム達はお互い連携して戦いを繰り広げた。
魁の強さを測るかのように。

四年生のところにも向かっていき、怪我人には向かっていっていなかった。

回路が狂った機械がそんなことをするだろうか?
プログラムが書き換えられていた?

最初はその会社が事故と見せかけた実験をしたのかと思ったが。
「あっやしいとこあらへん」
ガルムの設計図。プログラム。ありとあらゆる情報を集めた。
「実物をいじくったら分かるンやろうけどな……」
こうなったら、学園側のリサーチャーの腕にかかっている。

一体誰が、こんなことをしたのだろう…
疑問は尽きない。

「それにしても、危機一髪やったわぁ。」
魁の雄志が映ったカメラが一台生き残っていたのだ。
あれを見られていたら、魁は要注意人物として学園に目を付けられるところだった。
まぁ、そのかわり『ジン』こと『リトルエース』の姿を晒すことになったのだが。
「まぁ、そこら辺は勘弁なー。」
さすがに綺麗に、パイプだけが切られたガルムが
それも10台、あるという、状況証拠が残っていればエスケープゴートが必要だった。

そんなわけでジョーカーは魁の安否を確かめた後せっせと合成画像を元あった画像記録の上に重ねたのだった。
もちろんばれるような素人ではない。
もっとも監視カメラがもっと原始的なテープによる記録であったら手も足も出ないところだったが。
「技術革新さまさまやで♪」

そしてそれは今回の事件をフロンティアで検索すれば必ずヒットするようにした。
向こう側、学園情報部が操作しようとしても情報公開され続ける。
リトルエースの名は瞬く間に広がるだろう。

「ま、英雄を継ぐには、有名にならなあかんわけやし?」

魁に怒鳴られるが其処は言いくるめよう。フッフッフ。

怪しい男の周りに鳩やらリスやらも集まり一緒に肩を振るわせていた。誰も見ていないからこそ手間を掛ける。
それがジョーカーという男だった。
それこそがジョーカーだった。

ある意味シュールな空間にムンクの叫びのような音が鳴り響く。……もっとも、あの絵は中心人物が叫んでいる絵ではないのだが。
「お。メールや」

それを読んだジョーカーは思わず世界を変えた。
森が一気に空の彼方に変わる。
わざわざ髪をはためかせている。
「うっわ。マジかぁ」
暇になるやーーーん!!

メールは
授業参観の一ヶ月の延期を知らせるものだった。